お久しぶりの更新となりました。
昨年まではブラームスの交響曲第4番を中心に練習を進めていたのですが、年明けからはベートーヴェンの交響曲第8番(通称:ベト8)の練習に本格的に取り組んでいます。
ベートーヴェンといえばクラシック音楽史上でも最も偉大な作曲家の一人、日本では「楽聖」などと呼ばれクラシック音楽の道に生きる人間からは(時には必要以上に)神格化されてるようなところがあります。とはいえベートーヴェンにもスランプはありました、彼もまた人間なのですな。
交響曲第8番は、のだめカンタービレですっかり御馴染みの交響曲第7番と同時期に書かれた作品ですが、この頃は、フランスがオーストリアに侵攻しウィーン占領するなど国内情勢も不安定で、彼も交響曲第3番《英雄》のエロイカ的飛躍から交響曲第6番《田園》までの破竹の勢いが嘘のように創作が進まなくなった時期に当たります。
当時の友人への手紙の内容もどこか厭世的で現代若者風に書くとこんな感じ。
創作意欲が全然湧かないっす、俺凡人だったわwww
おまけに誰も信頼できなくてなんだか人間不信な感じもする、
あー誰か俺の嫁になって支えてくれねーかな…(←無い物ねだりw)
人生オワタ\(^O^)/
この曲を「快活な明るさ!」なんてストレートに捉えた素直な楽曲紹介をよく目にしますが、余計な知識も手伝って僕の場合はその裏にうっすらと漂うこの曲のダークサイドにどうしても目がいってしまいます。
例えば第1楽章の末尾は創作当初はf(フォルテ)で雄弁に終わるという構想だったそうですが、最終的に彼は第1主題の断片をP(ピアノ)で奏し、静かな収束を選んでいます。音楽評論家の宇野功芳氏はこの部分を「落語のオチみたい」と書いていますが、まさしくそんな感じです。ちなみに日本の演奏家の間ではこの部分に「あ~くたびれた。」なんて歌詞を当てはめたりします、これまた言い得て妙。(笑)
書いていったらキリがないのでこの辺でやめておきますが、とにかくこの曲は「一見すると」快活な曲調の裏に、空騒ぎや、その場で言って忘れてしまうような虚しいユーモア、ある種の自虐などが散りばめられた非常に面白い作品です。ベートーヴェンの交響曲の中ではマイナーであり異色な作品ですが、演奏会では彼の一流の「
ゲルマン・ジョーク」をお楽しみいただけたらと思います。

今回の演奏会ではベーレンライター社から最近になって出版されたジョナサン・デルマー校訂の原典版で演奏いたします、ベーレンライターの新版が出版されてからベートーヴェンの演奏解釈の幅はますます広がってきていますが、ファッションに捉われない「ユーゲント色のベト8」が演奏できるように頑張って参りたいと思います。
演奏会のアンコール曲目が決定いたしました。
詳細は演奏会当日のお楽しみなのでここに書くことは出来ませんが、クラシックにある程度造詣がある方は「
…なるほど、そうきたかぁ!」と思うこと間違いなしの選曲です。非常に美しく魅惑的な作品で、個人的にも大好きな曲です。こちらも合わせてお楽しみに!
by taxi