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ユーゲント日誌


今日は演奏会本番です! - 2014年03月21日
いよいよ今日は演奏会本番です!

昨日は夜からゲネラルプローベ(通し稽古)を行いました。ユーゲントフィルにとってマーラーの交響曲第9番を取り上げることは大きな挑戦です。この作品はアマチュアオケでも時折取り上げられていますが、その多くはマラ9を演奏するために組織されたいわゆる「一発オケ」による演奏で練習期間も3ヶ月程度の演奏会が多いようです。

アマオケのレパートリーに含まれにくい難曲を扱う場合には、その作品をこよなく愛する演奏メンバーだけを集めて演奏クオリティを追求して苦しくなる手前の「それなり」の段階で楽しく演奏することで「作品を演奏する」という行為そのものをイベント化することはアマオケ界では珍しくないことなのです。

そのようなイベントとしての演奏活動も素晴らしいものですが、常設のオケで半年間かけて難解な作品にじっくりと向き合うことにも大変大きな意味があると思います。実際に練習は「楽しい」と手放しにいえるものではなく「苦しい」と感じることも沢山ありました。しかし、作品とじっくりと向き合う過程で芽生えた作品に対する「愛情」が我々の背中を押してくれたように思います。

今は団員の誰もが「この作品をお客様に聴かせたい!」と強く思っています。それは言い換えれば、我々がマラ9に感じた愛情や素晴らしさをお客様に伝えたいという純粋な想いです。お聞き苦しい点もあるかもしれませんが、ユーゲントフィルが半年かけて書き綴ってきた熱いラブレターを受け取っていただければと思います。
それでは、すみだトリフォニーでお会いしましょう!



【ユーゲント・フィルハーモニカ― 第8回定期演奏会】
日時: 2014年3月21日(金・祝)
    19:00開演 (18:00~開場)
場所: すみだトリフォニーホール 大ホール
 (JR総武線「錦糸町駅」北口より徒歩3分)
演目: G.マーラー 交響曲第9番 ニ長調
 ※休憩はありませんのでご了承ください。
指揮: 三河正典
チケット: 全席自由 1,000円
  (フロントにて17:30〜販売開始)
  ※未就学児のご来場はお控えください




皆様のご来場お待ちしています!

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2014/03/21 11:17 | コメント(0)



演奏会をお楽しみいただくために - 2014年03月19日
演奏会まであと2日となりました。

今日は演奏会をお楽しみいただくために大切なことを2点お知らせします。

◆開演前には必ずトイレに行こう
今回はマラ9の1曲プログラムなので休憩がありませんので開演前にお手洗いは必ず済ませておきましょう。普段からクラシック演奏会に行っている方ほど、休憩時間にトイレに行く習慣が身についていたりするので開演してから「しまった!」となる方が多いようですのでご注意ください。尿意にマナーモードはありません。(笑)

◆チケットは全て自由席
開演の1時間前の18持からホールに入場できます、良い席で聴きたいという方は前売り券をお買い求め頂いて早めにお越しいただくことをオススメします。ぴあ前売券の発売は明日(3月20日)迄となっております。

◆1楽章を聴き逃さない!
今回はマラ9のみの1曲プログラム。約80分の曲のうち、1楽章だけで30分ほどの時間となります。内容としても1楽章が超重要!楽章間のご入場はできますが、演奏中はご入場いただけませんので、遅刻して1楽章聴けなかった!などとなりませんようお早めにご来場下さい。

【1】インターネットで購入
 チケットぴあの以下のリンク先から購入できます
 http://ticket.pia.jp/pia/event.do?eventCd=1349030

【2】店頭で購入
 Pコード: 216-736
 以下のお店で取り扱いしております、窓口でPコードをお伝えください。
 ・チケットぴあ各店
 ・サークルK・サンクス
 ・セブン-イレブン

当日券は演奏会ホールフロントにて17:30~販売開始いたします。よろしくお願いいたします。


2014/03/19 15:07 | コメント(0)



バーンスタインとマーラー - 2014年03月15日
演奏会まであと6日となりました!

今日は「マラ9を聴こう」特集で紹介した動画に頻繁に登場していた指揮者レナード・バーンスタインについて。この方はマーラーの交響曲を語る上で欠かせない音楽家の1人です。一般の方には映画「ウエスト・サイド・ストーリー」の作曲者といった方がピンとくるかもしれません。

バーンスタインが同じユダヤ系の作曲家兼指揮者であったマーラーと自分を同一視していたことは有名で、その作品について「自分で書いたような気がしてくる」と語っているほどです。そんな深い共感と共に残された録音群は不朽の名盤として今なお多くのマーラーファンに愛聴されています。

[参考リンク]
・バーンスタイン 交響曲全集(CD)
http://www.amazon.co.jp/dp/B00000DI2T
・バーンスタイン 交響曲全集(DVD)
http://www.amazon.co.jp/dp/B000BDIY3G

マーラー作品の数多くの初演を指揮したブルーノ・ワルターが亡くなって以来、取り上げられることの少なかったマーラー作品を積極的に取り上げたことによりマーラーブームが起こり、日本の楽団もこぞって演奏するようになりました。

マーラー作品がここまで有名になったのは正にバーンスタインの功績といっていいでしょう。もっと大袈裟に言えば、バーンスタインがいなかったらユーゲントフィルが演奏会でマーラーを取り上げることもなかったでしょう。

今回はバーンスタインの非常に情熱的なマラ9のリハーサル動画を紹介します。46:17の音楽の頂点を迎えるところでバーンスタインのおへそがペロンと出る所に注目です。それからヴァイオリンのトップサイド(コンサートマスターの隣)に座っているのは若き日のライナー・キュッヒル、髪がフサフサでこんな所に時の流れを感じます。(笑)

◆バーンスタインのリハーサル
バーンスタイン指揮/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団




2014/03/15 11:00 | コメント(0)



【特集】マラ9を聴こう 最終回「マーラーは人間である」 - 2014年03月14日
いよいよ最終回です。

まずはこれまでの連載から、私がご紹介した各楽章のイメージを改めて振り返ってみましょう。(もちろん感じ方は人それぞれなので、熱心なマーラーファンの方は各人の解釈にお任せします。あくまで初めて聴く方の入門編としてお送りしておりますのでご了承ください)

[私の頭の中のマラ9]
・第1楽章「人生の愛と甘美さへの告別
・第2楽章「人生の滑稽さへの告別
・第3楽章「人生の闘い(嫌いな人間)への告別
・第4楽章「世界への告別、昇天

マラ9は約100年前の作品ですが、100年経っても人間の考えていることや感じていることはさほど変わらないのだと実感します。この連載を通じて、一見すると遠い出来事のようなこの作品が現代を生きる人間にも共通する身近な感覚によって出来ているということが皆様に少しでも伝われば幸いです。(バッハやハイドンの時代だって人間の感情の種類は今と同じ、彼らは宇宙人ではないのです)

毎回好き勝手にマラ9を紹介してきた連載も最後になりますが、1時間半もの長大な作品を家で聴くのは大変ですから、文章は読んでいただけたとしても全部の動画を観たという方もきっと少ないでしょう。家にいるんだったらDVDレンタルして映画でも見たほうがいいですもんね。

でも、それでいいと思うんです。こういう長い曲こそコンサートホールで「生で聴くべき」なんです。だからこそ連載を読んでくださった皆様には第8回定期演奏会に是非お越しいただきたいのです。生で聴くと音楽に入り込めますし、あっという間の1時間半になると思います。インバル都響のマラ9のチケットを取れなかった貴方も是非!(笑)

3月21日(金・祝)はユーゲントフィルの「金曜ロードショー」をどうぞお楽しみください。

(演奏会当日にお配りするパンフレットにも作品紹介が掲載されておりますので、併せて読んでいただければ演奏会をより深くお楽しみいただけると思います)

最後にマーラーの交響曲第9番の全曲の動画をいくつか紹介しておきます。

◆バーンスタイン指揮/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団



◆アバド指揮/グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団



◆ハイティンク指揮/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団



◆ガッティ指揮/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団



ここまでお付き合いありがとうございました。連載は終わりましたが、今後も色々と更新していきますのでよろしくお願いします。



【特集】マラ9を聴こう(全6回)
・第1回「終楽章から聴いてみよう
・第2回「沈黙のすすめ
・第3回「思い出は甘美で残酷である
・第4回「人は社会に踊らされ
・第5回「前略、大嫌いな貴方へ
・第6回「マーラーは人間である


2014/03/14 08:00 | コメント(0)



【特集】マラ9を聴こう 第5回「前略、大嫌いな貴方へ」 - 2014年03月13日
今日は第3楽章について。

3楽章は「ブルレスケ」の音楽です。これは「道化」という意味で、ユーモアや辛辣さを持ったふざけた性格の楽曲を指します。他の作曲家で例を挙げるならショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番の第4楽章などが典型的なブルレスケです、冒頭の3分だけ聴いてみましょう。

◆ショスタコーヴィチ ヴァイオリン協奏曲第1番 第4楽章(冒頭)
ブラウンシュタイン(Vn)/ビシュコフ指揮/ベルリンフィル




マーラーは第3楽章に「アポロのわが兄弟へ」という標題を書いています。愛好家の方は「マーラーの14人の兄弟(7名は幼少時に死亡)、あるいは自殺してしまった弟のオットーのことだろうか」なんて妄想しそうですが、どれも違います。この「アポロの兄弟」とはマーラーの同僚たちを指しているのです。

その点を踏まえた上で表題を改めて見ると、親友や仕事仲間の栄光を称えたり、応援する曲になっているのではないかと誰もが想像するのですが、実際に聴いてみるとなんだかそんな雰囲気の音楽ではないとすぐに分かると思います。きっと多くの人が「あれ?」と思うでしょう。

音楽的に見てもまずブルレスケであるという時点でおかしいし、冒頭には「sehr trotzig(きわめて反抗的に)」という指示すらあるのです。同僚に対する好意的な印象は微塵もありません。…とここまで書いただけで賢明な方はもうお気付きでしょう。

そう、これは大嫌いな同僚への「皮肉」なのです。

日本のバレンタインデーに例えるなら、嫌いな同僚や上司に「いつもありがとうございます!手作りチョコです!」といって「呪」とか「怨」とか書かれたチョコをあげるような感じでしょうか。そんなシチュエーション実際にはないと思いますが、そういうことが出来てしまうのが音楽なんですね。そう思えばほら、2楽章と同じようにこの曲が身近に感じられるでしょう?(笑)

これは「人生の闘い(嫌いな人間)への告別」とでも言うべきでしょうか。マーラーが気難しい性格であったのは有名で、誰にでも良い顔をするタイプではなかった上にオーケストラのリハーサルでの態度も高圧的だったので人間関係はあまり良好なものではなかったようです。私個人的には仕事仲間だけでなく、アルマに手を出した男たちへの皮肉も込められているように感じますが…真実は闇の中です。

◆マーラー 交響曲第9番 第3楽章
バーンスタイン指揮/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団


Part 1

※動画のPART1の5:38〜トランペットに始まる穏やかな部分は、後に続く終楽章の主要メロディと同じもので「伏線」のような形をとっています。

Part 2


次回はいよいよ最終回です。



【特集】マラ9を聴こう(全6回)
・第1回「終楽章から聴いてみよう
・第2回「沈黙のすすめ
・第3回「思い出は甘美で残酷である
・第4回「人は社会に踊らされ
・第5回「前略、大嫌いな貴方へ
・第6回「マーラーは人間である


2014/03/13 08:00 | コメント(0)



【特集】マラ9を聴こう 第4回「人は社会に踊らされ」 - 2014年03月12日
今日は第2楽章について書いていきます。

第2楽章はレントラーのスタイルによる舞曲です。レントラーとは3拍子の南ドイツ発祥の民族舞踊です。「三拍子ならワルツじゃないの?」と想う方も多いでしょう、ワルツもレントラーも元々は農民が踊っていたヴェラーという踊りが起源で、そこから枝分かれした兄弟のような存在です。

ワルツはその後ウィンナ・ワルツを皮切りに社交場(舞踏会)で発展したためお洒落で洗練された音楽になってますが。一般的にレントラーはワルツよりもテンポが遅く田舎臭い鈍重な雰囲気が強くなっています。

マーラーはオーストリアの作曲家というイメージが強いですが、彼はオーストリア帝国ボヘミアの小さな村の酒屋の息子で田舎出身です。そのようなバッググラウンドを考えると田舎風のこの音楽に親近感を感じていたのかもしれません。(ちなみに妻のアルマは画家を父に持つウィーン生まれの都会っ子でした)

この曲は大きく分けると、3種類の舞曲によって構成されています。

・舞曲1 田舎風の舞曲(基本のレントラー)
・舞曲2 早いテンポの悪魔的な舞曲(速いレントラー≒ワルツ)
・舞曲3 ゆっくりとした穏やかな舞曲(遅いレントラー)

この3つの舞曲を交互に織り交ぜられた構成になっているというところだけ押さえていただければ全体像がわかりやすいと思います。舞曲2に関してはレントラーというよりはワルツに近いです、死の舞踏。

曲を聴いていて、どこかコメディのような滑稽な雰囲気を感じる方は多いと思います。これはある種「自虐」の音楽なのです。現代の日本のサラリーマンの典型的イメージ(思い込み)になぞらえるならこんな感じでしょうか。

・舞曲1:田舎の実家(帰省&原点回帰)
・舞曲2:都会の喧騒、仕事に追われる日々(通勤ラッシュ&社畜モード)
・舞曲3:酒を飲んで現実を受け入れる(ほろ酔い&諦め)

シンメトリーのように挟まれた1・4楽章も踏まえて考えると、人生の皮肉な出来事の回想と告別と見ることもできるでしょう。「人生の滑稽さへの告別」とでもいいましょうか。そう思うと、この曲が不思議と身近に感じられる人も多いのでは?田舎から上京した私のような人間はニヤニヤしながら聴いています。(笑)

◆マーラー 交響曲第9番 第2楽章
バーンスタイン指揮/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団


Part 1

※ちなみに上記の動画のPART1を例にすると、冒頭が「舞曲1」で、2:33〜が「舞曲2」、5:09〜「舞曲3」となってます。わからない方は参考にしてください。

Part 2


次回(第5回)は3楽章をご紹介します。



【特集】マラ9を聴こう(全6回)
・第1回「終楽章から聴いてみよう
・第2回「沈黙のすすめ
・第3回「思い出は甘美で残酷である
・第4回「人は社会に踊らされ
・第5回「前略、大嫌いな貴方へ
・第6回「マーラーは人間である


2014/03/12 08:00 | コメント(0)



【特集】マラ9を聴こう 第3回「思い出は甘美で残酷である」 - 2014年03月11日
今日は第1楽章について書いていきます。

昔の写真や思い出にまつわる物を見た時、或いはなんとなく憂鬱な夜…そんな時に、過去の楽しかった青春時代や恋愛に思いを馳せてため息をついてしまうような、ノスタルジーとセンチメンタルが入り混じった複雑な感情に襲われることが誰でもあると思います。今の季節だと、卒業式の帰りに多くの学生はそんな思いに耽るのではないでしょうか。

「・・・でもあの頃には戻れない」そう思ったあなたはきっと、その時代に別れを告げ、「これから」を生きようとするでしょう。

今回は結論から言います。マラ9の第1楽章は正にそんな作品です。

有名な話ですが、この曲のスケッチには「おお、消え去った若き日々よ!破れた愛よ!」と、完成した自筆譜には「おお、美しさよ!愛よ!さようなら!さようなら!」とマーラー自身が記しています。

彼が別れを告げているのは何であるか、それは人生であると考えるかどうかについては意見が別れるところですが。彼にとっての人生とは溺愛していた妻アルマそのものであるし、少なくとも「過去」との決別の想いが込められていたことは間違いないと思います。この作品を書く4年前に長女を亡くしてから、アルマとの関係も上手く行かず、実際に彼は様々な別れ(或いは別れの予感)を経験しているのです。

ちなみにマーラーの妻アルマも才能と美貌を兼ね備えた作曲家であり、マーラーより19歳年下でした。マーラーが一目惚れし猛アタックし、結婚したとき彼は42歳でアルマは23歳でした。若くて男性にモテモテな上に男遊びが好きなアルマと、気難しい性格でアンチも多かったマーラーの結婚生活はなかなか大変だったようです。アルマに献身を求め、婚約時にアルマが作曲することを禁止しちゃうマーラーもマーラーなのですが。(苦笑)

この辺りについては2010年に公開された映画「マーラー 君に捧げるアダージョ」などを観るとわかりやすいと思います。

◆映画「マーラー 君に捧げるアダージョ」
http://www.cetera.co.jp/mahler/ [公式サイト]
http://www.amazon.co.jp/dp/B005CMGLZO/ [DVD]

余談ですが、第1回の終楽章についての記事の中で「マラ5のアダージェットとマラ9のアダージョは趣が違う」という点に触れましたが。マラ5はアルマと結婚した年に書かれた作品で、彼は幸せの絶頂にありましたし第4楽章アダージェットのあとにはアンサーソングとしての第5楽章があるのです。青山テルマ風にいえば「ここにいるよ」に対しての「そばにいるね」というわけです。マラ9を書いていた時とは人生模様が真逆というわけです。

そういうわけで、マラ9の第1楽章を通して聴いてみましょう。目まぐるしく曲調が変わっていきますが、長調の明るい部分は過去形の甘い追憶で、単調の暗い部分はそれにまつわる現在進行形の懊悩であると解釈するとスッキリします。「人生の愛と甘美さへの告別」とでもいいましょうか。自分の過去と重ね合わせながら曲を聞けばきっとあっという間に30分が経ちますよ。(笑)

◆マーラー 交響曲第9番 第1楽章
バーンスタイン指揮/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団


Part 1


Part 2


Part 3


追伸:この連載、どうやら全6回になりそうです。(笑)



【特集】マラ9を聴こう(全6回)
・第1回「終楽章から聴いてみよう
・第2回「沈黙のすすめ
・第3回「思い出は甘美で残酷である
・第4回「人は社会に踊らされ
・第5回「前略、大嫌いな貴方へ
・第6回「マーラーは人間である


2014/03/11 08:05 | コメント(0)



【特集】マラ9を聴こう 第2回「沈黙のすすめ」 - 2014年03月10日
前回は終楽章の前半のみの演奏をお届けしましたが、今回も引き続きマラ9の第4楽章ついて書いていきます。第4楽章の最後の小節にマーラーはドイツ語で「ersterbend(死に絶えるように)」と書き込んでおり、音楽の細い糸が静寂の中へ消えていく終結部はチャイコフスキーの交響曲第6番《悲愴》の最後を思わせるような表現です。

◆チャイコフスキー 交響曲第6番 第4楽章 終結部
ゲルギエフ指揮/マリインスキー劇場管弦楽団




悲愴はロ短調の暗い和音によって締めくくられるので絶望に満ちた「死」のイメージが強いですが、マラ9の場合は変ニ長調の明るく柔らかい和音によって全曲が締めくくられます。

◆マーラー 交響曲第9番 第4楽章 終結部
バーンスタイン指揮/ウィーンフィル




これは「死」というよりは天に登っていくような穏やかな静寂ですね。マーラーの最後の微笑みとでもいいましょうか。
最後の部分は、弦楽器奏者にとっては緊張で弓が震えそうな場所です。音楽の細い糸を張り詰めた緊張感の中で紡いでいくことによって、単に「明るい」だけではない絶妙な演出効果が生まれてます。ウィーン・フィル(ウィーン国立歌劇場)やニューヨーク・フィルなど指揮者を務めオーケストラの心理まで熟知していたマーラーならではの表現かもしれません。

しかしながら、この部分というのは家で聴いているとよく聞こえません(イヤホンで聴くならば話は別ですが)。マラ9を流していたら静かになっていつのまにか曲が終わってた、なんて経験のあるクラシック音楽愛好家は多いと思います。

結論からいってしまえば、こういう静寂が力を持つ音楽こそ生で聴くべきです。巷ではよく「生オーケストラの迫力ある演奏をお楽しみください!」なんてキャッチコピーが使われることが多いわけで、フォルテがオーケストラ醍醐味のように捉えられがちなのですが、生オーケストラの醍醐味は繊細なピアニッシモの音楽にあると私は思います。

演奏者としてより一人のマーラーを愛する人間として言っておきたいのですが、この作品に限っては演奏が終わってすぐに拍手すると台無しになってしまいます。ホールに染みわたる静寂の中でそれぞれのお客がそれぞれの余韻に浸りながら、自分の周りにある死や生について思いを馳せる最後の「沈黙」まで含めて一つの作品として味わっていただきたいと思います。

映画館で作品が終わった後に観衆がそれぞれの余韻に浸りながら椅子に座ったままでいる時の雰囲気に似ていますね。「感じ方は人それぞれだからすぐ拍手したっていいんだよ」という現代型の幼稚な正論は通用しない世界だと思います、「人それぞれ」に何かを感じるためにこそ必要な沈黙なのですから。

そういうわけでマラ9の終楽章を通して聴いてみましょう。皆さんはこの静寂の中になにを想うのでしょうか。

◆第4楽章
アバド指揮/グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団





[追記]
第4楽章の最後の小節にマーラーはドイツ語で「ersterbend
(死に絶えるように)」と書き込んでいることに触れました。この記事に関して熱心な方から「実際の楽譜が見てみたい」というリクエストがありましたので、掲載させていただきます。




最後のゆっくりとした3連符のメロディを奏でるのはなんとヴィオラ!オーケストラをいつも影で支えている立役者に最後の花道を譲ったマーラーのニクい演出ですね。



【特集】マラ9を聴こう(全6回)
・第1回「終楽章から聴いてみよう
・第2回「沈黙のすすめ
・第3回「思い出は甘美で残酷である
・第4回「人は社会に踊らされ
・第5回「前略、大嫌いな貴方へ
・第6回「マーラーは人間である


2014/03/10 20:04 | コメント(0)



【特集】マラ9を聴こう 第1回「終楽章から聴いてみよう」 - 2014年03月08日
第8回定期演奏会で演奏するマーラーの交響曲第9番(以下「マラ9」)はマーラーの最高傑作といっても過言ではない作品であり、クラシック音楽ファンの中では非常に絶大な人気を誇る作品ですが、今回のユーゲントフィルの演奏会で初めて聴くという方も大勢いらっしゃると思います。そんな方のためにマラ9について書いていきたいと思います。

とはいえ、もちろん音楽は「聴くもの」です。ここにマニアックな知識や楽典用語をダラダラ書き連ねてドヤ顔しても仕方ないので、ゆるーい文章と共にYouTubeの動画を毎回1つ紹介していきたいと思います。全部で4回を予定していますので最後までお付き合いいただければと思います。

さて、この第9交響曲が完成したのは1909年。マーラーは49歳でした。1911年に50歳で敗血症で亡くなっており、交響曲第10番は未完成に終わっているので、実質的にマーラーの遺作となった作品です。演奏時間は約1時間半、その楽章ごとの内訳は以下のようになっています。

[参考] マラ9の演奏時間
・第1楽章: 約30分
・第2楽章: 約17分
・第3楽章: 約13分
・第4楽章: 約30分

ちょうど映画1本観るくらいの時間」といえばなんとなく納得できる時間ですが、お忙しい毎日を過ごしている皆様にとっては1時間半ずっと音楽だけを聴き続けるというというのはなかなか難しいかと思います。(熱狂的ファンなら別ですが・・・)

そこで私が提案したいのは、まず第4楽章のアダージョだけを聴いてみること。終楽章(第4楽章)のアダージョが全曲の白眉であることは、演奏家にとっても聴衆にとっても異論のないところでしょう。余談ですが私は高校時代、部屋を暗くして独りでこの終楽章を爆音で聴くのが好きでした。(黒歴史)

マーラーの緩徐楽章といえば映画「ヴェニスに死す」などでも使われている交響曲第5番のアダージェットが最も有名でしょう。マラ5のアダージェットは非常に甘美な印象が強いですが、このアダージョは生と死の葛藤で悶え苦しむような印象がより強くなっていると思います。

というわけで、今日はエッションバッハによる濃厚な演奏をご紹介したいと思います。ちょうど第4楽章の前半のみ(13分)となっておりますのでぜひ聴いてみてください。

◆マーラー 交響曲第9番 第4楽章 (抜粋)
エッションバッハ指揮/パリ管弦楽団






【特集】マラ9を聴こう(全6回)
・第1回「終楽章から聴いてみよう
・第2回「沈黙のすすめ
・第3回「思い出は甘美で残酷である
・第4回「人は社会に踊らされ
・第5回「前略、大嫌いな貴方へ
・第6回「マーラーは人間である


2014/03/08 06:49 | コメント(0)



前売券情報&チラシのご紹介 - 2014年03月05日
お久しぶりの更新となってしまいました。

【1】前売り券情報
ユーゲントフィル第8回定期演奏会のチケットは電子チケットぴあにお買い求めできます!

◆インターネットで購入される方
以下のURLから購入出来ます。
http://ticket.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=1349030&rlsCd=001

◆電話またはお近くのぴあ窓口で購入される方
Pコードを伝えることで購入できます。
電子チケットぴあ Pコード: 216-736
TEL: 0570-02-9999

前売り券は当日券よりもお買い得になっていますので早めにお買い求めの上、自由席ですので当日は早めに会場にお越し下さい。

【2】チラシのご紹介
今年も、かつて当団のチェロ奏者を務めていたデザイナーの小池氏による素敵なチラシが出来ました。




 もはや説明はいらないでしょう、グスタフ・クリムトの「接吻」ですね。一説ではこの女性はマーラーの妻アルマがモデルであるともいわれており、マーラーとも深い因縁のある作品です。興味のある方はお調べになってみるといいと思います。

既にいくつかの演奏会で挟み込みを行っております。演奏会でチラシを見かけたら是非お手にとってみてください♪


2014/03/05 20:18 | コメント(0)


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