今日は第2楽章について書いていきます。
第2楽章はレントラーのスタイルによる舞曲です。
レントラーとは3拍子の南ドイツ発祥の民族舞踊です。「三拍子ならワルツじゃないの?」と想う方も多いでしょう、ワルツもレントラーも元々は農民が踊っていたヴェラーという踊りが起源で、そこから枝分かれした兄弟のような存在です。
ワルツはその後ウィンナ・ワルツを皮切りに社交場(舞踏会)で発展したためお洒落で洗練された音楽になってますが。一般的に
レントラーはワルツよりもテンポが遅く田舎臭い鈍重な雰囲気が強くなっています。
マーラーはオーストリアの作曲家というイメージが強いですが、彼は
オーストリア帝国ボヘミアの小さな村の酒屋の息子で田舎出身です。そのようなバッググラウンドを考えると田舎風のこの音楽に親近感を感じていたのかもしれません。(ちなみに妻のアルマは画家を父に持つウィーン生まれの都会っ子でした)
この曲は大きく分けると、
3種類の舞曲によって構成されています。
・舞曲1 田舎風の舞曲(基本のレントラー)
・舞曲2 早いテンポの悪魔的な舞曲(速いレントラー≒ワルツ)
・舞曲3 ゆっくりとした穏やかな舞曲(遅いレントラー)
この3つの舞曲を交互に織り交ぜられた構成になっているというところだけ押さえていただければ全体像がわかりやすいと思います。舞曲2に関してはレントラーというよりはワルツに近いです、死の舞踏。
曲を聴いていて、どこかコメディのような滑稽な雰囲気を感じる方は多いと思います。これはある種
「自虐」の音楽なのです。現代の日本のサラリーマンの典型的イメージ(思い込み)になぞらえるならこんな感じでしょうか。
・舞曲1:田舎の実家(帰省&原点回帰)
・舞曲2:都会の喧騒、仕事に追われる日々(通勤ラッシュ&社畜モード)
・舞曲3:酒を飲んで現実を受け入れる(ほろ酔い&諦め)
シンメトリーのように挟まれた1・4楽章も踏まえて考えると、人生の皮肉な出来事の回想と告別と見ることもできるでしょう。「
人生の滑稽さへの告別」とでもいいましょうか。そう思うと、この曲が不思議と身近に感じられる人も多いのでは?田舎から上京した私のような人間はニヤニヤしながら聴いています。(笑)
◆マーラー 交響曲第9番 第2楽章
バーンスタイン指揮/ウィーンフィルハーモニー管弦楽団Part 1
※ちなみに上記の動画のPART1を例にすると、
冒頭が「舞曲1」で、2:33〜が「舞曲2」、5:09〜「舞曲3」となってます。わからない方は参考にしてください。
Part 2
次回(第5回)は3楽章をご紹介します。
【特集】マラ9を聴こう(全6回)・第1回「
終楽章から聴いてみよう」
・第2回「
沈黙のすすめ」
・第3回「
思い出は甘美で残酷である」
・第4回「
人は社会に踊らされ」
・第5回「
前略、大嫌いな貴方へ」
・第6回「
マーラーは人間である」